ヒトが異動・配置転換を嫌がる本当の理由

管理者向け
キャリアップのための前向きな人事異動をお願いしたが、どうも対象スタッフの反応がよくない。結果次の日に断られる。

なんていう経験がありませんか?

  •  もっと大切な仕事を任せてみたいが、対象のスタッフからの反発がある
  •  キャリアアップのために人事異動をさせたいが、なぜか対象のスタッフから反発される

こんな悩みを解決できる記事を用意しました。
結論から言うと、あなたの説得の仕方が悪いからです。
この記事でご紹介することを理解しながら実践すれば、スタッフの役割変更・人事異動がうまくできます。
いつもの通り、心理学の理論が元となっているので、科学的根拠もばっちりです。

記事では

  • あなたの説得がスタッフに響かない理由
  • 不安を丁寧に聞いて、安心を提示しよう

の2部構成で解説するので、じっくり読み込んでください!

あなたの説得がスタッフに響かない理由

あなたの説得がスタッフに響かないのは、役割変更・人事異動によって得られるインセンティブ(プラスの面)ばかり説明しているからです。
人は置かれている環境、所有しているものを手放すの事に強い抵抗をする特性を持っています(=しがみつきの現象)。
また、人は得られる喜びより、失う悲しさの方を強く感じる特性があります。
それをプロスペクト理論と言います。

例えば、カーネマンのマグカップの実験

実験方法
・学生を売り手グループと買い手グループに分ける
・大学のロゴ入りマグカップを売り手グループに配布
・売り手グループは「いくらなら売るか?」を提示、買い手グループは「いくらなら買うか?」を提示する
結果
・売り手グループが提示した価格平均:7ドル、買い手グループが提示した価格平均:2ドル
 ※同じマグカップ(時価6ドル)にもかかわらず、売り手と買い手で5ドルもの差が出ている!!

売り手は既に自分が所有していると言う感情があります。
そして同時にそれを手放したくないと言う感情が発生します。
カーネマンは一度手に入れたものを失いたくないと思ってしまう傾向あると分析しています。

人事異動や役割変更にこのことを応用しましょう
あなたの説明に対して対象となるスタッフはこんな思いなのではないでしょうか?

【スタッフの想いの変化】

確かに異動によるキャリアップは、またとないチャンスかもしれない(=手に入れた時の喜びを想像し、にいったん興味は持つ)

↓

待てよ。異動後は慣れない環境・仕事でうまくやって行けるのだろうか?(=失うことに対する不安)

↓

そのチャンスに飛びついたがゆえに、今の自分の立場、生活が悪化するかもしれない(=失うことに対する不安)

↓

冷静に考えると今の仕事って、結構いいよね(=しがみつきの現象)

↓

異動は断ろう

あなたの説得が響いてない理由がお分かりいただけたかと思います。

不安を丁寧に聞いて、安心を提示しよう

ではどうすれば良いか?
具体的には2つのステップを人事異動や役割変更の際は必ず入れると良いと思います。

ステップ①:スタッフが感じる不安をリストアップ

人事異動・役割変更によってスタッフが感じる不安を想像し、リストにしてみましょう。
また、打診時にもその場で答えをもらうのではなく、不安を聞くスタンスで面談をし、リストに追加をしましょう。

ステップ②:不安に対して、どう安心を提供するか考えよう(サポート、プランB)

ステップ①で不安に対して2つのことができないか?考えてみましょう

サポートの提示

その不安が現実にならないように、何をするべきか一緒にいっしょに考えましょう。
例:異動あとも定期的に面談、異動先のキーマンにあなたが理解を求める等

プランBの提示
※プランB:これまで続けてきた計画が頓挫したときに発動される次善の策。 代替プラン。

その不安が仮に現実になった場合、なりそうな場合、どうなるのかをしっかり提示してあげましょう。

  • 例:処遇は変わらず現在の職場(異動元)に戻ってこれるようにする
  • 例:違う異動先を探してもう一度チャレンジは与えられる 等

とにかく本人の不安を取り除くことが大切なので、上記以外でも手段があればどんどん試していくと良いと思います。

良い介護サービスには異動・配置転換は不可欠

最後に、ご紹介した内容をおさらいしておきましょう。

  • スムーズなスタッフの異動・配置転換等をする場合は、昇給やキャリアアップなどのプラスの部分だけでなく、現状の変化に伴う不安・恐怖に対してしっかり向き合う事が必要。
  • まずは不安・恐怖についてしっかりと聞き、サポートやプランBなどを提示してあげることが重要

どの介護事業者も人手不足で、きちんとした介護サービスを提供するのはなかなか大変なことです。
優秀なスタッフがいたら、「他の事業所・フィールドでも活躍してほしい」「良いノウハウ・姿勢を広めてほしい」と思うのは、経営者として当然ことです。
ただ、やり方を間違えると元も子もありません。
ご紹介した内容を実践していただき、参考にして、より良い介護サービスの提供にお役立ていただければと思っています。

今回は異動・配置転換について、解説させていただきましたが、良い介護サービスを提供していくために必要なことの一つにICT化があります。
これからさらに進む労働力不足を補うには、スタッフを大切にしつつICTの導入も進める必要があります。
以下の記事でICT導入が進まない理由とその対策についてまとめておりますので、ぜひ参考にしてみてください。

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