住宅型有料老人ホーム・サービス付高齢者住宅について、
- このまま運営して問題ないだろうか?
- 儲かっているようなので、新規参入にしたいが実際どうなのか?
- 事業買収の案件があるが、買っても大丈夫だろうか?
こんな悩みを解決できる記事を用意しました。
この記事を読んでいただくことで、住宅型有料老人ホーム(以下、「住宅型」)・サービス付高齢者住宅(以下、「サ高住」)の事業としての将来性が見えてくるかと思っています。
介護事業者・新規参入検討の異業種の方から多くのご相談を踏まえた上での内容ですので、かなり有益な情報かと思います。
記事では以下の順で説明しますので、最後までじっくり読んでください。
- 将来性はかなり厳しい ~同一建物減算が拡大~
- 売りたいなら、今は売り時
- 生き残るカギ①:拡大しない
- 生き残るカギ②:訪問看護
- 生き残るカギ③:介護付き有料老人ホームへの移行
- まとめ:ご利用者・ご家族にご迷惑をおかけしないように・・・
将来性はかなり厳しい ~同一建物減算が拡大~
結論から言うと、住宅型・サ高住は事業としての将来性はかなり厳しいと思います。
同一建物減算が大きくなると予想されるからです。
※同一建物減算って何という方は以下のページが分かりやすく書いてあるので、 参照してみてください同一建物等減算とは【2021年度介護報酬改定対応】同一建物等減算とは 同一建物等減算とは、事業所と同一の建物等に居住する利用者に対してサービス提供等をする場合の適正化を勘案した減算です。訪問系サービスと通所系サービスでは要件、適用範囲等が異なります。 2021年度介護報酬改定では、同一建物等減算を適用した場合の支給限度基準額の算定を見直す改定が行…
住宅型・サ高住を単体で運営しても利益はでません。
訪問介護・通所介護のような在宅サービスを併設させて、入居者にそのサービスを使わせて初めて利益が出てきます。
介護事業者にとってはわざわざ遠方の利用者宅などに訪問することなく、効率的にサービスを提供できるため、コスト効率も非常に高くなり、介護サービスの中では高収益ビジネスモデルとなっています。
よって、現在の住宅型・サ高住は非常に儲かっています。
※通常の在宅サービスの利益率のイメージ:10~20%程度 ※住宅型・サ高住の利益率のイメージ:30%程度
そこで黙っていないのが介護報酬制度という仕組みです。
基本的には儲かっているところから介護報酬を削っていきます。
その中でターゲットにされているのが、住宅型・サ高住における同一建物内に提供される在宅サービスで、同一建物減算と言います。
すでに同一建物減算という減算はあるのですが、この減算幅がもっと大きくなっていくのではないかと、有識者の中では考えられています。
また、同一建物でなく、住宅型・サ高住から数メートルしか離れていないところに、訪問介護・通所介護の在宅サービス事業所を建設することで、減算を逃れている事業者も多いようですが、ここにもメスが入るのではないかという見方が多勢です。
以上の事から、今の利益水準を確保していくのは難しく、事業としての将来性は極めて厳しいと考えています。
介護報酬制度の今後について詳しく知りたい方はこちらの記事を参照してください
売りたいなら、今は売り時
もし、あなたが住宅型・サ高住を展開する介護事業者の経営者で、後継者不在なのであれば、可能な限り売却した方が良いと思います。
先に述べた同一建物減算の拡大が予想されることから、今より業況が良くなることはありません。
一方で、他業界の方からすると少子高齢化マーケットの中心となる介護事業は魅力に映るようで、かなり高値で取引をされている印象を受けます。
きちんとした価格を出してもらえたら、高望みをすることなく、売却してしまう事をお勧めします。
逆にもし、あなたが住宅型・サ高住に新規参入をしようとしている、もしくは買収をしようとしている経営者・事業責任者なのであれば、相応に割安で買える場合を除き、基本的にはおすすめしません。
生き残るカギ
どうしても売却できなかった、売却したくないという事業者の方、よくわからないまま、参入してしまったという事業者の方向けに住宅型・サ高住が生き残る術について2つお示ししたいと思います。
生き残るカギ①:拡大しない
1つめは「拡大しないこと」です
先述した同一建物減算が拡大し利益を圧迫するものの、きちんと運営していれば赤字になることはありません。
今までもらいすぎている報酬分が正常化し、他サービスと同様の利益水準に落ち着くかと思っています。
高望みはせず、今の事業所の中で入居者の確保・従業員の確保を堅実にやっていけば、他介護サービス水準程度の利益率を確保し、事業としてやっていくことは十分可能かと思います。
間違っても、新規開設はしないようにしましょう。
生き残るカギ②:訪問看護の提供
2つめは「訪問看護の提供」です
もし訪問看護サービスを提供するノウハウがあるのであれば、明るい未来は少しあります。
介護報酬制度は、財源が十分ないことから、医療・看護依存度の高い中重度者への報酬は現状維持以上、軽度者への報酬はどんどん下げていくというのが今後の基本方針です。
住宅型・サ高住において中重度者を受け入れていくには、訪問看護は必須です。
同一建物減算で減る部分を訪問看護を通じた医療・看護サービスの提供で補うことができれば、引き続き高い収益力を持った事業展開が可能かと思います。
ただし、注意点としては、訪問看護の運営は専門性の高い知識・知見を要することから、非常に難しいとされています。安易には飛び込まないように・・・
最悪の場合、看護師の離職が続き、クレームや地域からの信頼失墜等、火に油を注ぐ結果となりますので、ご注意ください。
生き残るカギ③:介護付き有料老人ホームへの移行
3つめは「介護付き有料老人ホームへの移行」です。
介護付き有料老人ホームは、きちんと運営すれば高い利益が出やすい介護サービスです。
一方で、住宅型・サ高住と比べて、運営基準も相応に厳しいことから、介護報酬制度における主要な減額・減算のターゲットにはなっていません。
運営基準を満たし、住宅型・サ高住を介護付き有料老人ホームへ移行をすることで、収益の安定化が見込まれます。
ただし、移行には各地域行政からの指定許可が必要となります。
自治体によっては、総量規制を理由に容易に許可を得られないことも多々ありますので、ご注意ください。
ただ、トライする価値は十分あるかと思っています。
まとめ:ご利用者・ご家族にご迷惑をおかけしないように・・・
ここまでの話をまとめると以下の通りとなります
- 住宅型・サ高住の事業は同一建物減算の拡大が予想されることから、将来は暗い
- 拡大せず既存施設をきちんと運営していけば、現状ほどの高利益率ではないが、利益はきちんとでる
- もし訪問看護サービスの提供の余地があるのであれば要検討
- 介護付き有料老人ホームへの移行はとにかくチャレンジ
住宅型・サ高住について、かなり事業売却の案件が増えているように思います。
同一建物減算など、何も知らないファンド・事業者が高収益を魅力に感じて、安易に飛び込もうとしているケースが多々あります。
結果として不利益を被るのは利用者・ご家族の皆様になってしまいます。
運営している事業者の方、新規参入を検討している事業者の方、本記事を読んでもう一度今後の方向性について考えてみてはいかがでしょうか?
また、介護事業に異業種から参入をご検討されている方向けに、以下の記事を提供させていただいておりますので、ぜひご一読ください。
【近日公開予定】介護事業への新規参入のメリット・デメリット
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